骨粗鬆症とスポーツ

Doctor’s Voice(ドクターズ・ボイス)

西村整形外科 院長 西村 和博

ダッシュ秋号ドクターズボイス掲載医師写真 001先日、腰痛で来られた70歳ぐらいの女性の方に、腰の骨のレントゲンで少し潰れている骨があったので、骨粗鬆症で腰の骨が少し潰れかかっていることをお話しましたら、「私は水泳に、グランドゴルフに、登山をやっています。日ごろから運動をしていて骨がそんなに脆くなるはずがありません!」とちょっと叱られてしまいました。骨粗鬆症のことを詳細にご説明し、ご納得いただいたのですが、骨粗鬆症に対して誤解をされている方がいらっしゃるようであります。今回は、骨粗鬆症にスポーツがどのように関与するのかをお話させていただこうかと思います。

骨粗鬆症は運動をすることで予防が出来るのでしょうか。ある研究において、規則的に運動をされている高齢者の群と運動を行わない群とでは骨密度に有意な差を認めたとの報告があります。したがって、運動によって骨粗鬆症の進行を抑制することは出来るようであります。しかし、残念ながら運動を行っていれば骨粗鬆症にならないで、簡単に骨折を起し、寝たきりになるのを予防できるわけではないのです。

それでは、どうしたら早い時期に骨粗鬆症に気づくことができるのでしょうか。それは早めの検診だと思います。骨密度測定をはじめ、骨粗鬆症へのなりやすさを問診で判断してもらうことが、骨粗鬆症の早期発見、早期治療につながります。

特に女性に限ってのお話ですが、骨粗鬆症のなりやすさは母-娘の間に強い相関関係があることがわかっております。ご自分の母親や年上の姉妹が骨粗鬆症になって治療をしているようであれば、ご自分も骨粗鬆症になる可能性が非常に高いということです。そういう方は閉経前から骨粗鬆症に注意を向けていく必要があるかと思います。

骨粗鬆症の予防は閉経前からも大切です。 人が骨強度を高める時期は、女性ですと初潮から18歳までとされております。この時期に、骨強度を最大限にしておきませんと、 将来、骨粗鬆症になりやすくなるわけです。

では、この時期に最大限の骨密度を得るにはどうしたらよいのでしょうか 。多くの研究が発表されておりますが、簡単にまとめてみると

  1. 運動を適度に行うこと。特に骨格に荷重がかかる運動はより効果的である。
  2. 紫外線に当たることで、ビタミンDが多く合成され、ミネラル吸収が促進される。
  3. 良質のたんぱく質やミネラルの多い食品を積極的に摂取する。卵、緑黄色野菜、牛乳・乳製品は特に効果的である。
  4. ダイエットを控える。

などが上げられております。18歳以後もこれらの事を守っていただければ、骨密度の 低下を最小限にすることが出来ます。逆に運動をせず、偏食や無理なダイエットを行えば、急速な骨密度の低下を招き、閉経前より骨粗鬆症になりやすい状態になってしまう可能性があります。

最後にスポーツが骨粗鬆症を招く原因になることがあるお話をしたいと思います。トップアスリートの女性選手たちの抱える大きな問題のひとつに、生理不順があります。生理がなくなることで、選手生活が潤滑に行えるということで、一部の選手は歓迎をしているようですが、この状態は一時的な閉経と同じであります。つまり、急速な骨密度低下を招く恐れがあり、問題となっております。18歳未満の女性選手が過度な運動にてホルモンバランスを崩し、運動を続けている話を耳にします。よい成績を収めることも大切ですが、 将来、体を壊してしまうのではスポーツの本質を見失っているかと思います。是非、考え直していただきたいと思います。

適度な運動は丈夫な体を作り、健全な精神を養います。一生にわたり運動を継続することにより、健康的な生活を育んでくれま す。現在の若い世代は室内に籠もりがちな仕事が多かったり、ファーストフードなどの偏在的な食事をしたり、過激なダイエットをされたりと、将来、骨粗鬆症になってしまうのではないかと大変、危惧しております。適度な運動を屋外で行い、バランスのよい食事を生涯通して行うことが大切ではないかと思います。

(西村和博「骨粗鬆症とスポーツ」DASH!ふじさわ 2012, Vol.47, p.2)